2019/04/08

by 食事と読書

読むと食べるはよく似ています

 

 

 

 

食事をするときの楽しみ方は人それぞれだ思います

 

料理を誰かのことを想いながら作ることが好きな人
料理を待つのが好きな人
料理に対し深い知識を用いて食事を楽しむ人
食欲を満たし大きな満足を得る人
食事が終わった後の余韻を楽しむ人

 

味覚を使って十人十色、様々な楽しみ方をします
その楽しみには時系列が確かにあって
どこが一番好きかもまた、一人ひとり違うはずです

それは本を読むときも同じだと思うんです
作品によっても違うと思うんです
最近、本を読んでてよく感じるんです

料理や食事をすること
本を読んで、またそれを言葉に残すことはとてもよく似ているなぁと

 

 

てなわけで
久しぶりに本のレビューいってみたいと思います

 

 

 

 


幻夏/太田 愛

 

 

23年前の少年失踪事件と現在起きている少女誘拐事件
相互に関係する事件は過去と未来を経て様々な人間を巻き込んで混ざり合う
混ざり合って見える色は読者によって違うはずです

前半にちりばめられた伏線を後半に一つずつ回収していきます
謎が謎を呼ぶ展開に、こんなに風呂敷広げちゃって大丈夫?
て思ってたけどしっかり回収してくれました
物語に沿って、自然に綺麗に違和感なく回収してくれるところがとても良かったです

冤罪という社会性のあるテーマを持ちつつ
家族や愛、友情に心を傷めながら
幼少時代に感じた情景を懐古する

幼い頃、まだ世界を知らない、世界も自分でさえも固まっていない時代に感じた夏の描写がとても鮮やかで、蒼く儚く五感を刺激されます
ノスタルジックを感じられます

個人的にあと良かったのが喋りながら食べているご飯やら酒なんかがとても美味しそう
大事な会話よりも遣水が食べてるコースを追ってしまった人はなんか気が合いそうです笑

 

 

 

 

 


また、同じ夢を見ていた/住野 よる

 

 

幸せってなんだっけ!?なんだっけ!?
なんて口ずさんでしまいます

人生とは○○のようなものだ、が口癖の小学生、奈ノ花は幸せとは何かということを女子高校生、風俗嬢、おばぁちゃんから教えてもらうお話し

人生が料理だとするならば語れるのは、料理を食べ終わった後、つまり人生がほぼ終わりかけている時だろうと思います
人生を語る奈ノ花がほんと背伸びしている小学生でキャワイイ
でも核心を突いてくることも言ってくるのでドキリとしてしまいます

奈ノ花が問いていく「幸せとはなにか?」に対して、高校生や風俗嬢、おばあちゃんの応えを聴いていくうちに
奈ノ花の幸せに対する形、考え方が変わっていくその様を上手く描写できていると思います

でもおばぁちゃんが説く幸せの形が最強だと思う
奈ノ花はそれをずるいというのですが、俺も読みながらそれはずるいと呟いてしまいましたねぇ

物語そのものにもいいアクセントが効いていて俺たちを飽きさせません

 

では私からも
人生とは、山手線のようなものだ
どこから始まってどこで終わるかわからないけどそこには乗車と下車があり
様々な出会いと別れがそこにありますからねぇほほほ

 

 

 

 

 


夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦

 

 

僕はこの本が大好きです
表現やテンポ、キャラクターやストーリー、果ては京都まで全部好きです

 

特にこの陰キャ系男子『先輩』の呟きはクラッカー鳴らして飛び跳ねて握手したいくらい心を打ちます

例えば先輩はクリスマス前をこう表現します
地平線上にクリスマスという祭典がちらつき出し、胸かき乱された男たちが意図明白意味不明な言動に走り出す暗黒の季節だと

 

最近よく思います
恋愛とは恥です、恥の上塗りです
先輩の言葉を借りればどこまでも暴走する己のロマンチックエンジンをとどめようがなく
恥ずかしさのあまり鼻から血を噴くのです
そして恥の後に嫉妬がきます
嫉妬で燃えた胸の焼け跡を恋風が轟々と吹き渡るのです
僕は第3章も好きですが第4章が一番好きです

 

なぜ私はこんなにも彼女を追いそして置いてけぼりになるのであろう。
なぜ恋をしてしまったのかなんていくらでも言える気がする
でもそれは結局、上手く言葉にできないんですよねぇ

 

この本は不器用な恋と闘う男と恋を知らない黒髪の乙女の物語です

出会い、遊び、深め、嫉妬し、四季を通じて先輩と乙女は少しずつ近づきます
破茶滅茶な登場人物が百花繚乱する少し変わった世界の中で普遍的なものがそこにはあります
願わくば俺にもそれがありますように、なむなむ

おススメはしないかなぁ
嫌いな人にはあまり面白くない本だと思います
僕は大好きですけど

 

 

 

 

 


かがみの孤城/辻村 深月

 

 

この本は読み終わった後にどう感じるかだと思います
食事でいうと前菜で今後の期待を匂わせながら爽やかな味を楽しませた後
宣言してたわかりやすいメインディッシュが期待を裏切らず
それを食べて大きな満足を得た後
実はその後のデザートがさらに良かったみたいな

 

僕は泣きましたね
きっと泣かない人も多いと思います
恥ずかしかったけどこの本で泣けて良かったです
この本で泣ける感情を持てていて良かったと

後半の伏線回収が秀逸で
物語が全てを通じて一つにまとまっている作品はやっぱり素晴らしいと思います

三月の章からエピローグまでの時間
幸せな時間でした
闘うのが嫌なら闘わなくていいと言ってくれる人、いますか?
それでも闘う人がそれを言われるということ、それがとても甘美でした

今度は私の番だ

ここでもう僕はだめでしたね
最高かよ

幸せな時間でした
幸せになってほしい人におすすめしたいです

 

今んとこ文句なし今年一番の本です

 

 

 

 


儚い羊たちの祝宴/米澤穂信

 

素晴らしいタイトルだと思いました
読んだ感想は?
と聞かれたら僕はこう答えます
儚い羊たちの祝宴だったと

お嬢様と「バベルの会」読書会
5編からなる短篇の中に出てくる共通の言葉
すべてが一人称で語られます
満たされない現実の中「ほんとはこうだったら…」なんてついつい妄想してしまいそうな物語
そこまで作り込めていない、物語や設定などどこか子供っぽさが残る内容
この作品は米澤穂信が描いた作品でありながらどこかの学校で現実と幻想の中
狭間で生きる女性たちが書いた小説なんじゃないかと思ってしまいます
彼女たちの聖域はバベルの会と呼ばれ、みんなで小説を書いて見せ合う
だから最後の儚い羊たちの晩餐ではバベルの会をやめさせられてしまった女性が小説の中で全員を殺してしまうのです
現実と幻想の狭間の中で

なーんて僕は感じましたね
人それぞれ違うはずです

 

貴志 祐介が好きな方は是非オススメです
一緒に同じ短篇集の『満願』もいいですよ
津田沼の太田ヘッドは絶対好きだと思うなー
て、もう読んでそう

 

玉野五十鈴の誉れ
がやっぱり最高でしたね
彼女の誉れとはなんだったのか
なんだったと思います?
ほんとオススメです

 

短編として、個人的に最高傑作です
あ、ちなみに僕の最高傑作は随時更新されますねぇほほほ
短編なので手軽に読める中、背筋を凍るのを感じ、そして最後考察する余韻を残します

最後の一行に物語のすべてが詰まっていて
人によって感じ方も違うはずです
誰かと一緒に読んで
その後どう感じた?なんて話が盛り上がる本です

 

ちなみにどう感じました?
一編ずつお酒でも飲みながら語り合いますか

なんてね

 

 

 

 

い、いかん
書き始めると一瞬で時間が過ぎてしまいます
まだまだたくさんあるんですけど
書き始めたらきりがないのでここらで止めておきます

 

 

オススメの本があったら気軽に教えてくださいね!
またレビュー書きたいな